2013年5月7日火曜日

Bioshock Infinite

Angry Joeによるレビュー

前に発表された予告に比べると、ゲーム本編は期待した物では無かった。
2010年に発表されたらしい「ゲームプレイ」動画

ゲームプレイを除けば本編は素晴らしい出来た。驚嘆する美しさと密度を持つ舞台設定、ゲーム本編に影響を及ぼさないメッセージ性(どう感じるかはプレイヤー次第)、前作Bioshockよりも主人公を全面に出した「様に」見えるのはパブリッシャーからの圧力なのかは不明だが、通常版以外では主人公が描かれていないので恐らくそうなのではないだろうか。

で、ゲームプレイはというと、2007年に発売されたBioshockと違う点は無い。プレイしている感じはほぼ同じだ。違いはというと、環境を使う要素が少ない事と機能していなかったBig Daddyが削られた事だ。そう考えるとゲームプレイの要素はBioshockより少なくなっている。なのでメディアで言われる「画期的なゲームデザイン」というのはどこを指しているのかわからない。私が遊んでいるゲームは違うのか?

ゲームを進めてみて、感じた事は多分ゲームとしての面白さを追求しなかったのでは無いだろうか。という事だ。だって2010年の「ゲームプレイ」動画の方が圧倒的に面白そうだからだ。あれに比べるとRAGEを彷彿とさせる敵AIと特に面白くも無いスカイライン…正直に言えばもっと素晴らしい体験を出来る物と信じていたスカイラインだ。ジェットコースターよりも遥かにしょぼく、あれならスキー場のリフトの方がスリルがあると思う。ゲームとして面白くする事はできたのだと思う。ただ、それを選ばなかったのでは無いだろうか。例えばスピードを出し過ぎたらスカイフックが外れるようにすればプレイヤーは慎重にスカイラインを使うだろうし、ゲーム的にはメリハリが出ただろう。実際の所、ゲームプレイとしてコロンビアが空に浮かんでいる理由は特に無い(私がプレイした範囲での話だが)。

プレイヤーのストーリー体験を中心に据えた結果としてゲームプレイが切り捨てられた様に思われる。残念か?と言われたら残念だと答える。とはいえ、ゲームプレイを切り捨てた結果「画期的なゲームデザイン」として評価され、販売も好調ならそれは成功した結果なのだろう。ただ、そこまでしてストーリー体験を表に出すなら別にFPS形式にする必要があったのだろうか?私の場合、ゲームプレイとストーリーの両輪が回る方が好きで、片側が猛烈な速度で回転すると冷めてしまうため尚更そう感じるのかも知れない。どの武器を使おうが、どのギアを使おうがゲームプレイはさほど変わらない。”なんとかには火が効きません”と表示されても「へぇ」としか思わない。「不味いぞ!火が効かないのかよ!」なんて事は無い。

じゃあどうしてこういうデザインにするのか?という事を考えるとプレイヤーに死亡体験をさせたくなかったからなのでは無いだろうか。プレイヤーを死亡させれば嫌でも「ああ、これはゲームなのか」と感じざるを得ない。だからスカイフックが外れる事も無いし、武器やギアの取捨選択を間違えて詰んだりしない。逆に有利になったりもしない。弾が無くなったら他の武器に切り替え、しょっぱいギアを装備してもうんざりする事も無い訳だ。全てはプレイヤーのストーリー体験の為に、と考えれば納得が出来る。

ああ、そう考えると確かに「画期的なゲームデザイン」と言えなくも無いのか。私はHalf-Lifeの夢から醒めていないだけなのだ。多分心のどこかで再びああいう体験をしたいと思っていて勝手に期待しただけなのだ。Bioshock Infiniteは私にとってお買い得なゲーム(Spec Ops: The Lineと$20分のポイントと…何故かXCOM: Enemy Unknownもついてきた…大丈夫かGamersGate)だった訳だが、まだ 15年前のHalf-Lifeの夢を追っているというかなり苦い自分を知って少し憂鬱だ。FEARで海兵隊との戦いの夢は醒めたが、Half-Lifeで経験した、「環境vs自分」の夢は醒めていなかったのだ。

私がBioshock Infiniteに期待していたのは、コロンビアの環境と戦う事だったのだ。だからここまでガッカリしたのか。ようやくわかった。スカイフックを握りしめて助走してジャンプしたかったのだ。スカイフックをスカイラインに引っ掛け損なって真っ青になりたかったのだ。科学の夢である「空中都市」を体験したかったのだ。想像の中で火花を散らし走るスカイフックを歯を食いしばって握り締めた手応えは素晴らしい物だった。白い雲海と青い空と空に浮かぶコロンビアの光景の中、風を切り裂きスカイラインを進むのはまさに想像を絶する体験だった。 発売までの(ありがたい事に流石2Kだけあって、英語版なのに1ヶ月延期してくれた)ワクワク感を味わったのだから私にとっては良い体験だった。あのワクワク感に比べれば本編でのガッカリなど大した事では無いのだろう。それがわかっただけでも良かった。

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