2023年2月5日日曜日

Night Call

 万人向けでは全くない。刺さる人には刺さるが、そうでは無い人には間違いなく駄目だろう。


アラブ系フランス人の主人公が謎の連続殺人犯に襲われて、捜査する羽目になる。

その理由はゲーム開始してすぐに語られる。


様々なビターな内容の満漢全席。ダメだと言う人の気持ちも良くわかる。だが私には内容がとても興味深かった。


良い点はバラエティ豊か過ぎる(100人以上)の登場人物。印象的なアートワーク、素晴らしいゲーム音楽、音楽が素晴らしい以上に、近年珍しいゲームを物凄い盛り上げてくれる音楽だ。話は容赦なくビターで遊んでいて手が止まる事が度々あった。私はゲームを遊んでいて、天井を見上げたり、うめき声を上げたりなんてのは、思い出せるぐらいしか経験が無いが、それらの今までの経験を合わせたぐらいこのゲームでそれを経験した気がする。


悪い点はゲームとしての完成度がかなり低い所。バグは結構多く(まぁ開発会社フランスなのでこれは予想がつく話だ)、捜査は正直面白くは無い。これが一番の問題なのだが、なんというか…目隠しして流しそうめん食べてる様な感じだ。ここが面白ければもっと評価されたのでは無いだろうか。多分開発者は捜査がこのゲームで一番重要だとは思っていない。タクシー運転手としての会話の方がメインなのだろう。だが、プレイヤーのとっかかりは多分タクシー運転手としての会話では無いのだろう。なので、仮にこのゲームを気に入るであろう、潜在的プレイヤーまでも脱落してしまったのだと思われる。何せ2019年7月発売のゲームなのに、私が遊んでいてプレイヤーの1.6%が実績達成みたいなのが3つもある…。


なので推理ゲーム…一応、ではあるものの、推理要素に期待してゲームを遊ぶと間違いなく「外れた」と感じると思う。このゲームはタクシー運転手のスケッチ集だ。なので映画と言うよりは固定セットで投影された映像が流れる中、様々な人が登場して、様々な話をするゲームである。今風に言うとナラティブ?多分そんな感じなんだろう。


貴方がゲームの文章は味わい尽くさないと気が済まないタイプなら間違いなく当たりだと思う。もちろん内容が気に入ればなんだろうが。当然内容が気に入らなかったら、味わい尽くしたいなんて思わないよな。


文章を読んでいて、時代が変わったな、と感じるのは昔は嫌なキャラクターというのが出てきたとしよう。昔は立ち絵の上に「こいつは嫌なヤツです」と書いてある様なキャラクターだった。寧ろ、だったと言うより「でしかない」みたいな感じだ。だが時代が変わったのか、善人のキャラクターにも色々な側面がある様に、嫌なキャラクターにも色々な側面があるのだ。文化窃盗がメインテーマ(主人公がする側)の映画が「世界最高傑作で万人が見るべき!」みたいな言われ方をする、人種差別アクセル全開の時代は概ね終わり、プリズムの様に様々な見方の出来る作品が出てきたのは喜ぶべき事なのだろう。「インディー」とは良く言ったものだ。これはメジャーから出せない作品だろうから。

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