2021年12月12日日曜日

Oxygen Not Included

 非常に危険なゲーム。

中毒性は恐ろしく高く、「30分だけ…」と思ったら3時間経過していたりとか、自分の意思で「今日は止めておこう」と思わないと止めるのはかなり難しい。

ゲームは小惑星(?)に送り込まれた複製人間3人が惑星内深くから地下(マグマがある)と地上(宇宙空間に面してる)を目指し、最終的に40万キロ(…でしたっけ?)先の天体まで到達する、というモノ。

地下深くを目指すのは、石油資源(ロケットの燃料やプラスティック等の生産に関わるからで、地上を目指すのは他の天体を観測し(観測していない惑星にはロケットを飛ばせない)ロケットを飛ばす準備をする為だ。

…まぁそれが目的なのだが、そこは遥か彼方先の話で最初は

  • 限られた空気
  • 限られた食料
  • 電気ゼロ
  • 水無し

の狭い坑道から始まる。水を確保し、食料の生産を始め、電気を発電し、技術研究を始め…と無限にタスクがある。電気に至っては最初は複製人間が車輪を漕いで発電する。その発電をバッテリーに貯めて機械を動かし研究設備を動かし、その研究設備には土を定期的に補給する必要があり…とありとあらゆる事柄が繋がっている。

酸素は初期の救済策としてオキシライトという酸素を発する物質があるが、生産手段が手に入るのは後になるので、その間に様々な方法で酸素を得る必要がある。一番使用頻度が高いのが水から電解で酸素と水素を生み出す方法だと思うが、酸素は当然複製人間の呼吸に使われるとして、微量に生み出し続けられる水素は当然呼吸に適さない。

このゲーム、液体と気体には重量があり、水素は酸素より軽い。つまり上に上がれる場所があれば水素はどんどん上に溜まってゆく。ちなみに酸素を呼吸してる…という事は二酸化炭素も増えて行く。二酸化炭素は気体の中では重いので底に沈んでいく。最初はどちらも微量なので無視出来るものの、時間が経って減る事は無いのでどう処理するのかという選択を迫られる。

…とまぁこんな感じで膨大な状況を少しづつ解決し(あるいは解決に失敗し)て出来る事がどんどん増えて行き、プレイヤーの解決知識を高めて行くゲームである。このゲームのデザインの非常に優れている所は、事態の解決が困難になった時、「何が原因かさっぱりわからん」ではなく、「ああ!(かなり以前の)アレが原因か!」と解る様に作られているという事だ。

最初は生存のみを考えて遊ぶと思うが、次からは少し先を考えて遊び直し、その次は更に少し先を…を果てしなく繰り返す。プレイヤーとか見てるとプレイ時間4桁とか居るが、なるほどこれは中毒性高すぎるわ。

後、この手のなんていうの?サンドボックス物?で良くある問題点が2点が解決されている。まずは規模が大きくなればなるほど発生するマイクロマネジメント(マウスであっちをチェック…こっちをチェック、を無限に)はプレイヤーが自動化を行う事で処理可能。また、いつまで経っても目的を達成しない、優先度を変えても達成出来ない、という事象についてはパス計算をかっちりやる事で解決している(但し、移動距離が馬鹿みたいに長いと到達出来ないのと、複製人間に仕事の好みがあるのでそこは仕様となる)。ただ建設関係は雑に命令を出すと時々複製人間が閉じ込められたり取り残されたりするので、現場はある程度見守る必要がある。

で、サバイバル物なのだけど、小惑星の種類とランダム構成と難易度「サバイバル」か「楽勝」を選べ、私は楽勝でしか遊んでいない(多分この先も楽勝以外遊ばない)が、楽勝であっても面白さが劣化する事は無いと思う。もちろん挑戦こそ命な人は幾らでも上を目指せるのだろう。

ゲームデザインとしては「ここはリアルっぽく」と「ここはゲーム的に」の分け方が近年稀に見る素晴らしさ。ここ30年の中でもトップクラスのデザインだと思う。気体、液体は1マスという視覚的に理解しやすいデザインになっている反面、熱に関しては物質の比熱、伝導等が物凄い細かく計算されている。エンジンはUnityを使用しているが膨大な処理を行いつつ、ゲームそのものは意外な程軽い。もちろん開発が進むにつれ、少しづつ重くなり続ける(が、プレイ不可能になるのは相当先だろう、多分)。

誰の言葉か忘れたが(シド・マイヤーでしたっけ?ウィル・ライトだったかな)「優れたゲームデザインとは教育的であるべきだ」、これはゲームは勉強の替わりになれ、とかシリアスゲームの話をしている訳では無い。シヴィライゼーションではプレイヤーは都市は水源(出来れば海にも)の近くに作らねばならないと経験的に知る。もちろんプレイヤーは知識として都市化に水源が必要だとは知っているだろうが、優れたゲームデザインを通して得られるモノはより経験的で普遍的だと思う。このゲームに関して言えば「熱」が最も大きなゲームデザインだと私は思う(まぁこの先、変わるかも知れないが)、ほぼ全ての物が熱を発し、大型の機械は大きな熱を発する。冷却は基本的に熱交換に過ぎず、熱をどこかにか処理しない限り、居住地の破滅を招く。つまりエアコン使って部屋が冷えていたら当然その熱はどこかに行ってる訳だ。知識としては知ってる話だが、それがどれだけ恐ろしい事か身をもって経験出来る。

非常に危険で恐ろしく傑作。Oxygen not Includedはそんなゲームである。

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